私が先輩にちょっかい出されたところで、彼方にはなんの関係もないのに。
……なんて、嬉しいくせに卑屈になってみる。
「じゃあまた部活でな」
「はい」
先輩ふたりと別れて、教室へ向かう。
隣のクラスとはいえ、やっぱりふたりと違うクラスっていうのはこたえる。
ぷくっと頬を膨らませてふたりを見送ってから自分のクラスへ足を踏み入れた。
ドキドキと高鳴る鼓動を落ち着かせるように深呼吸をひとつ吐いて。
「遥香ちゃん」
座席表に従って席についてカバンを机に置いた時だった。
後ろから声をかけられて、振り返る。
そこにいた人物に思わず目を見開いた。
「美乃梨ちゃん!」
「えへへ、高校でもよろしくね?」
「こちらこそ!」
微笑む美乃梨ちゃんを目の前に暗かった心がいっきに晴れる。
そうなのだ。美乃梨ちゃんとも同じ学校へ神学できたのだ。
クラス表を見ていたときは気づかなかった。美乃梨ちゃんと同じクラスだったこと。
「ふたりと離れちゃったの残念だったね」
「うん」
「私も蒼くんと同じクラスが良かったなぁ」
残念そうに目線を落とす美乃梨ちゃんに「今度4人でどこか行こうよ」と励ます。
蒼を一途に好きでいる美乃梨ちゃんに、姉として感謝している。
たぶん、蒼も美乃梨ちゃんのこと……。
その先の言葉は心の中でもやめておいた。他人の恋路に介入しすぎても良くないだろうし。



