「は、遥香……? 大丈夫……?」
蒼から、恐る恐る呼ばれた名前。
半泣きな状態で顔を上げて、ふたりを見る。
「……遊びに行ってもいい?」
「もちろん……!」
「見捨てない?」
「見捨てるわけない……!」
蒼のフォローに「絶対だからね……⁉︎」と念押しする。すると後ろから「相変わらず騒がしいな、お前らは」と懐かしい声がかけられた。
振り返るとそこには予想通り青葉先輩と彼方の兄、陸都くんがいた。
さっきまでのテンションはどこへやら。いっきに気分が上がり、顔に花が咲く。
「先輩……!」
「お久しぶりです!」
3人で頭を下げる。
ふたりが優しく笑って「待ってたよ」と陸都くんが言ってくれた。
「遥香ちゃんはまた野球部入る? 大歓迎だよ?」
「まさか。野球は中学までです。高校じゃしませんよ。知ってるでしょ」
「いで……!」
青葉先輩に肩を抱かれ、返事をしながら脇腹をヒジで殴る。
この先輩、女グセが悪いのはまだ治ってないのか。
「先輩……」
「まあそんなカリカリすんなって彼方」
静かに青葉先輩を睨む彼方。そんな彼方の肩に青葉先輩が笑いながら手を置いた。
むすっとした表情の彼方。いつからそんなに役者になったんだか。



