ぷんぷん怒って蒼の後に続いて歩く。
腕を組んで少しだけ歩いたところで、ぐいっと彼方から腕を掴まれる。
わっ!と、驚いて態勢を崩し、後ろに重心がいく。彼方に体重を支えられて、心臓が大きく跳ね動いた。
そして耳元で「あんま可愛くしないで」と言われて「っ⁉︎」と、声にならない声が出る。
「……っ」
「変な虫がついたら嫌だし」
慌てて自立し、彼方と距離をとる。
囁かれた右耳を手でかばう。
そうやって彼方は一方的に台詞を述べて、蒼のほうへ歩いて行った。
私の顔……今、どうなってる?
きっと、いや、絶対真っ赤だ。
ずるい。ずるい。彼方のバカ。アホ。
熱い。
変な虫ってなに?
嫌だってどういうこと?
ぐるぐる考えながら彼方の大きな背中を見る。
……バカ。
***
やがて校門が見えて来る。
同じ制服を身に纏った生徒たちがすこし浮かれた表情を顔に張り付けて校門を抜ける。
昇降口前のホワイトボードにはクラス表が貼り付けられていて、私たちは自分の名前を探した。
「A組……」
ぽつり、彼方が呟いたクラス。
その後に続き「あっ、俺も!」と蒼が言う。
「えっ、私、B組……?」
見つけた自分の名前は、B組の欄に記載されていた。それは紛れもなくふたりとは違うクラスだということを示していた。
嘘でしょう? どうして、私だけ離れた?
落ち込みすぎて、リアクションが取れない。隣にいる彼方が「マジか」と言葉を落とした。



