天国で君が笑っている。



『合格してる……!』


難関だった高校受験。合否発表で自分の番号を見つけたときは叫んで喜んだ。隣にいた蒼も少し遅れて『俺も……!』と叫んだときは思わず抱き合った。


一番に母と父に電話して、その次に彼方へ電話をかけた。


『私っ……私たち、合格してたよ……っ』


焦って言葉がうまく出てこずに喉につまった。
スマホの向こうにいる彼方は無言で、


『……はっ』


数秒後、ようやく息を吐いて『よかった』と言ってくれた。


その思い出深い合格発表からもう一週間は経った。


リビングでお母さんの作った朝ごはんに手を合わせる。
ふっくらした白ごはんも、あったかくて優しいお味噌汁も、塩加減が絶妙な鮭も美味しい。


お母さんはキッチンでお父さんのお弁当を準備していて、お父さんはテレビのニュースをBGMにして新聞を読んでいる。


……幸せだなあって思う。


「いってきます」

「あ、ふたりとも待って」


かばんを持って玄関から家を出ようとした時だった。母がカメラを手に駆け寄って来た。


「節目のときは撮るって決めてるの」


お茶目に笑った母に私たち姉弟は顔を見合わせて笑った。


「はーい、ふたりとも笑ってー」


家の前で蒼と肩を並べる。
私は母が構えるカメラに笑ってピースをする。
蒼も不器用に笑いながら、カメラを見ていた。


節目には撮ると言った母。私はあと何度その節目に立ち合い、撮ってもらえるのだろうと考えて泣きそうになる。


ぐっと喉の痛みを感じた。
だけどそれら全てを一掃するように笑って背の高くなった蒼の肩に腕をまわしてわざとらしくはっちゃける。


「蒼! もっと笑いな!」

「は⁉︎ いきなりなに⁉︎ きもいって!」

「はいはい、照れなくていいから、お母さん撮って!」


最高の笑顔で撮れてるといいなと思いながら私は精一杯に笑った。
隣の家に住むおばちゃんが私たちの声に気づいて「私が撮ってあげるから」と父と母を含めた家族全員でも写真を撮った。


「じゃあ行ってくるね」

「うん。後で行くからね」


お母さんたちに手を振って、最後の通学路を歩く。
学校へ向かっている途中、見慣れた後ろ姿を発見した。
心が躍り、口角があがる。駆け寄って背中に手を伸ばして、触れた。


「おはよ、彼方」