みんなが帰ったあと、ひとりでいつまでも泣いた。
泣き疲れて、意識を失うようにその日は眠った。
次の日の手術は無事に成功し、手術から2日経って私は目を覚ました。
けれどそれは完治した、というわけではない。


脳内を圧迫していた大きな腫瘍は取り除くことができていたけれど、すべて無くなったわけではない。これからも経過は見なくてはいけないし、私の脳にまだ腫瘍はある。


5年後の生存率だって変わっていない。


頭にできた傷を指先で触る。確かに先生は有言実行してくれて、傷は目立たない。きっと、私が坊主にならなければ誰にもバレないと思う。


みんなに黙って死ぬけど、大人しく死ぬわけにはいかない。
彼方と私の夢が叶う瞬間だけは、絶対にこの目で見て、死んでやる。


泣きたくなる。苦しくなる。誰かに甘えて、すがりたい。
……生きたい。


そんな想いを心の奥底にしまって。


ギリギリまで、しぶとく、生きてやる。


夜、ひとりきりの病室で決意を胸に眉間に皺を寄せ、天井に拳を突き上げる。目尻に黙っていた涙はかってに流れていった。


14歳、春。私は、もう泣かない。