春休みに入ってまた私は部活を休んだ。
今度は肺炎という理由にした。
脳腫瘍を摘出する手術をするための入院だと知っているのは家族と顧問だけ。
手術を行う前日の昼に入院した。
白い部屋。白いベッド。白いカーテン。
ここはまるで天国にいく準備をするところみたいだ。
……なんて、縁起でもないことを考えて、やめた。
明日のことを考えると怖くて泣きたくなる。
ベッドのふちに腰掛けて、窓の外を見る。
父は仕事。母は売店で飲み物を買ってくると病室を出ている。蒼は部活。
私、明日、死んだりしないよね。
傷跡残るの嫌だなあ。
先生はできるだけ目立たないように頑張るって言ってくれたけど。
……普通に、なりたいなあ。
使わないけど、お守りとしてグローブを持ってきた。
おもむろに左手にはめる。
初めてはめた父のグローブは大きく、ぶかぶかだったことを思い出す。
今でも大きいと思う。
だけど、もう、私の身体の一部みたいになっている。
──「学校行くときはグローブいらないでしょ」
──「いるよ。肩見放さず持って、身体の一部みたいにしたいんだ」
──「ふぅーん?……彼方みたいに?」
──「げっ、なんでわかった⁉︎」
蒼との会話を思い出してクスッと笑った。
あのときの私は想像もしていなかっただろうな。
お守りとしてグローブを選ぶなんて。
彼方と出会わなかったら私の人生どうなっていたかな。
たぶんきっと、野球なんて好きじゃなくて。
いつまでも泥だけで野球をする蒼をバカにしていたと思う。
クーラーのきいた室内で、女の子たちと人形で遊んだり、可愛いお洋服を着てファッショショーなんてして。



