14歳。
あまりに残酷な運命に心が追いつかない。
余命宣告から何時間、何日経っても。
生きて、やりたいこと。うんとある。
だけど、そのほとんどを私は果たすことできずに死ぬんだ。
私は大人になれずに死ぬ。
「……寝た?」
ふと耳元で声がして目を開ける。
髪の毛を濡らしたまま、蒼のスウェットを借りたらしい彼方がソファで寝そべっていた私の隣にいた。
「寝てないよ」
「お腹痛む?」
「ううん」
「……そっか。なんか、遥香が元気ないと落ち着かねえんだけど」
「元気ない、かな?」
「ない」
あまりに度直球言われて苦笑する。
肯定も否定もできない。
「お前が元気ださねぇと帰れないんだけど」
「……じゃあ帰んないでよ」
「えっ」
「うちにいなよ、ずっと」
私のそばから一秒も離れないでよ。
一秒だって無駄にできない。
……そうだった。私、もうすぐ死ぬんだ。
落ち込んだまま時間を無駄にするところだった。
もう少しワガママになってもいいんじゃないだろうか。
「……おばちゃん」
「ん?」
驚いたはずの彼方が少し離れたキッチンにいる母に話しかけた。
「今日、泊まっていってもいいっすか?」
「えっ、それは、まあ、もちろん!」
「あざっす。俺親に電話してくるわ」
なんでもない顔して、耳にスマホをあてながらリビングを出ていった彼方。
どうしてそんなに優しいの。
どうしてそんなに甘やかしてくれるの。
彼方。やっぱり、私、死にたくないよ。
毎秒、想い重なるのは、生きたいという願い。



