急に彼方が知らない男の人のように見えた。
「……ねえ、彼方」
「ん、なに?」
「進路、どうするかもう決めた?」
今朝先生から言われたことを思い出していた。
早いと思わず真剣に考えろって話。
まだ二年生の春だ。
受験まで一年以上も時間がある。
だけど一年後に進路を決めている自分は想像つかない。
「……俺は兄貴と同じ学校に行くよ」
「そう、なんだ……」
やっぱり、そうなる……よね。
甲子園の常連校だもん。そりゃ、そうだよね。
「特待、狙ってる」
「彼方なら大丈夫だよ」
なんの心配もいらない。
才能ももちろんだけれど、努力も怠っていない。
彼方なら大丈夫。
その夢を邪魔するものなんてきっとない。
安心感すらある。
絶対に彼方の夢は叶う。
未来は笑顔で満ち溢れている。
だから、なんのアクシデントもなく、このまま時間が経っていけばいい。
「……遥香」
「うん?」
「お前ももちろん来るだろ?」
澄ました顔で。さも、当たり前のように言ってのけた彼方。
思わず笑いそうになって我慢し、腕を組む。
「あんたねぇ、その学校の偏差値知ってるの?」
「知らん」
「でしょうね! ほんとに物凄く、高いんだらかね⁉︎」
……でもね、嬉しかった。
同じ学校へ進学することが当たり前だと思っていてくれたこと。
「……今から勉強頑張らないと無理なんだから」
「応援してる」
「他人事すぎ!」
「はははっ」
普段人前で声を出して笑わない彼方。
中学生になってもやっぱりクールって言われているけれど、私といるときは笑ってくれる。
そんなところも……好き、だ。



