天国で君が笑っている。



「行ってきまーす」


蒼に構うことなく家を出た。
この一年で朝、蒼に合わせていたら遅刻しそうになったことが数えきれないくらいあって、それが嫌で私は自分の支度ができたら蒼を待つことをやめた。


生まれる前から一緒で、生まれてからも一緒。


いつも隣にいたけれど、こうして自然と距離が出ていくんだろうなって思うと不思議な感じ。




女の子同士の双子だったらまた違ったのかな。


……なんてことを考えていたときだ。見覚えのある背中を見つけて考えるより先に駆け寄った。


「おはよ、彼方」

「おはよ」


目があって、首をかしげる。
それを見た彼方が不思議そうに首をかしげた。


「あれ、また彼方背、伸びた?」

「さあ、わかんね」


とぼけた顔でさっさと歩き出した彼方の隣に小走りで追いつく。
小学生の頃は、なんなら最近まで身長なんてそこまで変わらなかったはずなのに。


男の子はこれからどんどん成長期に入って女の子の私をどんどん追いていくんだろうな。


心の中に寂しさがじんわりと滲む。
小学生の頃は男女との差なんて感じたことなんてなかったのに、どんどん遠くなっていく。


走る速さも、ボールを投げることも、打つ飛距離も。
もう、なにも同級生に勝てない。


……野球、そろそろ限界かも。


「なに暗い顔してんだよ」

「え?」

「似合わねえの」


強張っていた頬が緩んで、ギスギスしていた胸中が柔らかくほぐれる。
ぶきっちょな優しさに思わず笑ってしまう。