驚く。部長が人差し指で鼻をかいて「これにそんなに価値があるとは思わないけど」と言い、私はまばたきをかり返す。
「でも、確かにこれは三年間、俺の心臓の近くにあったものだよ」
部長の、陸都くんの三年間。
彼方にそっくりな笑顔で目の前にいる陸都くんに「ありがとうございます」と笑って第二ボタンを受け取った。
「……よかったな。初恋の人から第二ボタンもらえて」
「っ、だから違うってば!」
耳元で囁いた蒼にすかさず蹴りを入れる。
するりと避けられて私の怒りが消化不良のまま心に残る。
どうして私の初恋の人が陸都くんなのか、どうしてその説が流れているのか謎なのだが⁉︎
青葉先輩のこと好きなんでしょとも言われるし。
みんなはわかっていない。私が好きなのは……。
チラッと彼方のことを見る。先輩たちに肩を組まれて、ウザ絡みされている。それを煙たがりながらも満更でもないような顔で受け止める彼方。
一年前はどうしてもわからなかったもの。
恋とか、好きとか、よく理解できなかった。
それでも今はちょっとだけ、わかっている……つもり。
「……弟をよろしくね」
陸都くんに肩にポンと手を置かれて、我にかえる。
深く頷くと、陸都くんは他の部員のところへと行ってしまった。
手のひらの中にある第二ボタンを強く握りしめて、目の前にいるチームメイトの晴々とした表情と団欒を眺めていた。



