それでも部長を任されてからの青葉先輩はきちんと部長としての責務をまっとうしている。それは、私たちもちゃんと感じている。慕っている。


昨年、夏の大会で三年が引退したあとの野球部はすこしだけ形を変えた。
圧倒的な存在を放っていた陸都くんと青葉先輩とじゃリードの仕方が違う。


どんな時でも真剣にいた陸都くんと、時折笑いながら冗談を含んでメリハリをつける青葉先輩。


私はどっちの部長も大好きで、尊敬している。


「あ、部長たち来た!」


蒼の声に昇降口付近が騒がしくなったことに気がつく。


野球部の先輩たちが出てきたのが見えて、私たちに気づいてくれた部長たちがこちらに歩み寄って来てくれる。


「まさか俺たちのために集まってくれたのか?」

「はい」


青葉先輩が返事をして、彼方からヒジをつつかれてハッとする。
背中に隠していた色紙を取り出して部長に差し出す。


「部長、三年間お疲れ様でした!」


私が言うと部員が一斉に「おつかれッしたァ!」と頭を下げて叫ぶ。
顔をあげると先輩たちが驚いたように目を見開き、瞬間、頬を綻ばせて笑った。


それぞれ後輩が三年生の先輩へ色紙と花束を渡していく。


私は部長にかなりお世話になった。
男子しかいない野球部で、女の私の肩身は狭かった。
だけどそれを感じさせないような配慮や気配り、そして圧倒的なリーダーとしての士気。
それらに私は幾度も救われた。