ちがうのにな。そんなんじゃない。
男の子に囲まれたいから野球をしているわけじゃない。
野球が好きで、楽しくて、野球部に入ったのにな。
周りの女の子たちからそんな風に思われていたこと、知らなかった。
「あれがお前の水筒だよな?」
「えっ、あ、」
すぐ後ろに立っていた人物に気付いたときにはもう彼は教室の扉に手をかけていた。
カラガラッと音を立てて開いた扉。女子たちは驚いたようにこちらを向き、私と──それから青葉先輩を見て表情を強張らせた。
先輩は何事もないかのように教室に入り、私の水筒を取ると私に「ほら」と手渡した。
「ありがとう、ございます……」
「いーえ」
青葉先輩、いつからいたんだろう。どうしてここにいるんだろう。
「ほら行こう」
「はい」
「あ、ちょい待ち」
なにか忘れ物? と、思ったら、先輩は教室の扉に手を置いて「あんたら」と女の子たちに話しかける。
「なにか勘違いしてるけどさぁ、野球さ、女の子が男の子にモテたいからってだけでやれるスポーツだと思ってるわけ?」
バツが悪そうに女の子たちは歯を食いしばって目線を地面に向けた。
「この子の手、見たことある? マメだらけで、それでもバッドを振るから潰れて、皮もむけて、結構悲惨だよ。もちろん痛いよ」
はっとして手を強く握ると、昨日潰れたばかりのマメに痛みが走る。
「それに女の子はどんなに頑張っても試合に出られないの。報われないのに頑張れる理由が男って、その発想はかなりヤバイよ」



