天国で君が笑っている。



その日も雨だった。
放課後になって部活の時間になり、いつものように準備体操をしたあと、一階から三階まで階段を上り下りして、入った休憩。


かばんを弄(まさぐ)り、探していたものがないことに気づいて肩を落とす。


「ごめん、水筒教室に忘れたから取ってくるね」

「おう」


彼方に声をかけて、忘れた水筒を取りに教室まで戻る。
私の記憶が正しければ、おそらく机の上に置きっぱなしだ。


教室の扉に手をかけた瞬間だった。「てかアイツまじで目障りじゃない?」と胸に突き刺さる声が聞こえてきたのは。


咄嗟に動かしていた腕を止めた。幸い指先が扉に触れる前で、教室内にいる女子数名に私がここにいるということは気づかれていないようだった。


「アイツ?」

「朝霧妹」

「ああ」


まさか、私のことだとは思わなくて目を見開いた。
ぎゅっと胸もとで手を握る。


「絶対男目的で野球してんじゃん」

「青葉先輩?」

「彼方くんもいるしね」


ドクドクと脈打つ心臓の動きに戸惑う。変な、嫌な感情が心臓が血液に乗って体中を駆け巡っていっているみたいですごく気持ち悪い。


「逆ハー狙って入部したなら相当な男タラシだよね、あの妹」

「いや、マジそれな」


……ひどいな。せめて名前ぐらい呼んでよ。


なんて心の中で自嘲したって、指先が震えていることは誤魔化しようがない。
悪意を誰かにこんな風にむけられるのが初めてで、どうしたらいいのかわからない。


この人達がいる教室内に入ることなんて到底出来ない。

休憩時間も、もう終わってしまう。