天国で君が笑っている。



だって私は生まれて一度も恋をしたことがないんだもの。
誰かを好きになったことなんて。


経験がないことだからこそ、気になるのかもしれない。
彼方に「好きだ」と言った女の子のことが。


「私てっきり遥香ちゃんは彼方くんのことが好きなんだと思ってたんだけどなぁ」

「え⁉ ないない! あり得ないから!」


勢いよく顔の前でぶんぶん手を振って否定する。
美乃梨ちゃんはクスクス笑って「そっかぁ」と笑うけれど、私はそれが今いち納得できなくて、くちびるを尖がらせる。
だってまるで"はいはい"といなされているみたいだから。


それに恋を知っている美乃梨ちゃんは少し大人っぽい。
いや、かなり。
ちょっとだけ羨ましいかも……なんて。


でも、だけど、どうして美乃梨ちゃんは私が彼方のことを好きだと思ったのだろう?


単純に仲が良いからかな。それとも別の理由があるのかな。


「じゃあ遥香ちゃんは彼方くんが他の女の子と付き合うって言ったら応援できるんだね?」

「それは……っ」

「ん?」

「っ……」


言葉がつまる。ぷくっと頬を膨らませて机に顎を乗せると「よしよし」と美乃梨ちゃんに頭を優しく撫でられる。


……わからない。


確かに、彼方に彼女ができたら嫌……かもしれない。
昨日だって告白を断ったって言われて安心した。


私は彼方が好き……?


蒼とクラスメイトがふざけあっている教室の後ろ。そこから一歩引いた所で、それらの光景を眺めて控えめに笑う彼方をこっそりと見る。