天国で君が笑っている。



無機質な表情と声で。いつもの彼方で。


だけど私はいつも通りだなんてとても言えない。
ドキドキして心臓が痛くて、驚いて、一瞬で恥ずかしくなって、私の中のなにかが爆発するかと思った。
なにかは、わからないけれど。言葉で説明できない、なにか。


「も、もうっ、いきなりびっくりしちゃったじゃん」

「なんで?」

「ばか!」


勢いに任せて暴言を彼方に投げる。それでも彼方に私の真意というか、状況はうまく伝わらない。だって首を傾げて不思議そうな顔をしている。
とかいう私だって自分の中でなにが起きているのか説明はできないのだけれど。


「トイレ」


そう言うと私は廊下に出た。
ふうと、大きく息を吐くと、すぐ近くで「あ」と聞き慣れた声がした。
顔をあげると目の前には青葉勇樹先輩が立っていた。


体験入部のとき「俺と組む?」と誘ってくれた先輩だ。
この先輩について、入部から二ヶ月が経ってわかったことといえば……。


「えッ、青葉先輩だ……!」
「ほんとだ! かっこいい!」


……この学校のアイドルだということだった。
先輩、同級生、後輩。どの学年の女子からも絶大な人気を誇っていて、青葉先輩目的で集まるギャラリーに野球部って動物園だったっけ?と、思うときがある。


そしてこの先輩はその人気を自覚している。
今だってほら、キャーキャー言っている女の子たちに手を振り返しているし。


「あ、青葉先輩? どうしてここに……?」

「ああ。まあ、たまたま?」

「そう、ですか」


まあいいやと横を通り過ぎようとしたとき、ぐっと腕を掴まれる。


「今日髪の毛結んでるんだね」

「え? あ、はい」

「かわいいじゃん」

「は⁉」