天国で君が笑っている。



六月になって例年より少し早く梅雨入りした。
連日の雨でグラウンドでの練習ができず、校内の階段をのぼってはおりてを繰り返し、筋トレをする毎日。
球に触れられないのはもどかしくはあるけれど、不満はない。


晴れたとき、精一杯野球をするための準備期間だと思うと、筋トレも楽しかった。


「おはよー」

「おはよ」


六月、二回目の火曜日。朝、教室に入るとクラスメイトたちと軽快に挨拶を交わす。
私の後ろからあくびしながら同様に教室に入ってくるのは蒼とポーカーフェイスの彼方。


席につくと美乃梨ちゃんから「おはよう」と言われて「おはよう」と返す。
朝日よりも穏やかな彼女の笑顔を見るとなんだか癒される。
私が男の子だったら美乃梨ちゃんを彼女にしたい……なんて、そんなことをふと思う。


「遥香ちゃん今日は髪の毛結んでるんだね」

「うん、そうなの」


少しずつ伸びて来た髪を今日は両サイドで結んできた。毛先を指でつまむと無意識に鼻にもってくる。


「伸ばすの?」

「迷ってるんだ」


小学生のときは私の覚悟として髪の毛は短く揃えていたのだけれど、中学生になって、女の子としての自分を捨てきれない私がいることに気づいた。
しかも、ゴムで結んだ方が圧倒的に首元がすっきりして涼しいし、汗で髪がまとわりつくこともないことにも気づかされた。


不意に両サイドの髪の毛を誰かに持たれて驚く。


「ちょ……っ」

「確かに伸びたな」


ふわふわと私の髪の毛を弄ぶのは、彼方だった。
恥ずかしくて咄嗟に彼の身体を押して距離をつくる。