天国で君が笑っている。



クスクス笑う彼方が蒼を真似て「まさか」と肩をすくめた。私はそれに微かな安堵を覚える。


「そうだよね。野球してるから恋なんてしてる暇ないよね」

「まあな」


その返答にまた、安心する。

すると「そんな理由なわけあるかよ……」と蒼が水を差すから、今度は彼方が睨みをきかせた。


……入学してまだ一ヶ月しか経っていないのに。
彼方のこと、好きになる女の子がいるんだ。


告白したくなるぐらい。
好きって、言いたくなるぐらい。


付き合いたいって、思うぐらい。


考え込む頭を振り切るように笑って、「彼方には大きな夢があるんだから」と叫ぶ。


「おう」


まんざらでもないような彼方の返事。


甲子園に行って、ドラフト一位でプロ野球選手になって、その年の新人賞をとる。
そしてインタビューで私の名前を呼んでくれるんだよね。


何度も何度も頭の中で想像した。
その度にドキドキして、ワクワクするの。


楽しみでしょうがない。
簡単な夢だと思っていないけれど、彼方なら叶えられるって信じている。


そしてそのすぐそばに私はいる。
一番近くで、一番に祝福する。


それが……私の夢。


「そろそろ帰ろー。腹減ったぁ」


蒼がお腹をさすっている。
私は「そうしよ」と賛成して、帰宅の準備をした。歩いて家路につく三人の影が仲良く並んでいる。


途中で彼方とバイバイして帰宅。すぐにお風呂に入って、お母さんの作った晩ご飯をお腹いっぱいになるまで食べる。そして、寝る。


そしたらまた朝を迎えて学校へ。
繰り返される毎日のなか、特別な変化はないけれど、充実していた。


私はきっと、幸せだった。


***