「じゃあ俺あっち行くから」
「おう」
去っていく部長の背中。
他の一年生にも話しかけにいっているようだ。
背、高いな。彼方よりかなり高い。なんセンチなんだろう。
「……なに兄貴のことジッと見てんの」
「んー、かっこいいなって思って」
「あんなのがタイプなの?」
「うーん」
タイプかぁ。そんなこと考えたこともなかった。
友達とは芸能人の誰がかっこいいとか、漫画に出てくる男の子がかっこいいとか、そういった話はするけれど、明確な答えはまだ私の中にない。
「彼方も……」
「ん?」
「ううん、なんもない」
陸都くんもかっこいいとは思うけれど。
優しくて、背も高くて、大人っぽくて。
けれど、私の目には、彼方も同じくらいかっこよく見えるんだ。
「整列!」
その部長の掛け声に急いで立ち上がり、部長のもとへみんなが走った。
「ちゃんとやってるかぁ〜?」
グラウンドにやって来たのは顧問の高谷先生だった。
私を見るなり「おお、ちゃんと来たのか」と言われて「はいっ」と返事をした。
「まあ、俺から言うことはひとつだけ、文武両道。勉強も部活も、両方とも頑張れるやつだけ入部してくれ。二兎を追う者は一兎をも得ずじゃダメだ。二足の草鞋を履きこなせ。どっちかだけは許さん。以上、練習に戻ってよし!」
一斉に返事をするけれど、なんて破天荒な言い分だろう。



