天国で君が笑っている。



「今日は体験入部で一年生がいるから、先輩たちはちゃんと面倒を見るように」


すこしだけ遅れて部長を囲む輪の外側の位置についた。


そんな私に気付いて目線をやった部長はそのまま話の骨を折ることなく「じゃあいつものように、準備体操とランニングから」と声をかける。


「はい!」


みんなが返事をして、グラウンドに散らばり、マウンドの中心に部長が立つ。


「屈伸よーい、イチ、ニー! イチ、ニー!」


部長の掛け声に合わせて私たちも声を出し、ストレッチが進んでいく。
ふざける人はもちろんいなくて、ひとつひとつを真剣に取り組んでいく姿勢に、背筋が伸びる。


「よし次ィ! ふたり一組になって腹筋100回!」


ひ、ひゃっかい⁉


冗談抜きで白目を剥きそうになりながら「はい!」と返事をするのがやっとだった。
これまで練習でやってきた腹筋は連続でも30回だった。


できるか不安を抱いた次に、誰と組むかで周りを見渡した。


するとタイミングよく私の肩に誰かが手を置いた。
振り返ると、先ほど私が入部することに不満げな返事をした二年の先輩が立っていた。


「よかったら俺と組む?」

「え?」


自分の顔を指さしながらニッコリ微笑むその先輩。どう言葉を返したらいいか悩んでいると、周りから「おーい、セクハラ目的だろ、どうせお前」、「変なとこ触んなよ」と野次が飛んできた。


その途端に自分が女であることを深く理解し、恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。カァァッと熱くなる顔。


やばい、どうしよう。逃げたい、かも……。