部活動紹介が終わり、ぞろぞろと教室に戻る。
騒がしい教室内。各々なんの部活にしようか話し合っているなか席に着くと、元チームメイトだった男子に「遥香はどうすんの?」と聞かれて笑顔が固まる。
「んーっと……」
「迷ってんの? 野球部じゃねえの?」
「帰宅部も、いいかなって……」
「はあ⁉︎」
叫ばれて耳元がキーンとする。顔をしかめて両耳を手でふさいだ。
「もったいねえ」
「ありがと。でも女の子は入部できないから……」
好きでも。野球経験者でも。入部なんてできっこない。
「野球じゃなくてもさ、バレーとかバスケって選択もあるんじゃないの?」
近くにいた蒼が口を挟む。そのとなりに彼方がいる。
静かに下に目線を落とした。
「……うん。でも野球以外はしたくないんだ」
きっと、他のスポーツをしていたって"どうしていま私は野球してないんだろう"って考えてしまう。
苦しくなって、きっとそのスポーツが嫌いになってしまう。
頑張れる気がしないんだ。
「……つーか、まだ入部できないって決まってなくね?」
「え?」
そう言ったのは彼方だった。
彼方は「行くぞ」と私の手首を握ると、そのまま私を引きずるように教室を出た。
「ちょ、ちょっと……っ、どこ行くのよ……っ」
「顧問のところ。聞こうぜ。本当に入部できないのか」
「で、できるわけないじゃん……」
「諦めるのはハッキリ言われてからにしよう」
淡々と言う彼方に、のどがキュッとしまる。



