話しかけられて、手を上げて応える。
野球で同じチームだったメンツだ。
その人たちが「彼方〜!」と絡んでいってるのを見て笑う。
蒼もその塊に混じっていった。
「遥香ちゃんって、男の子と仲が良いんだね……?」
「うん。野球やってたから」
「そうなの⁉︎ み、見えない」
「でしょ」
華奢だし、日焼け止めを徹底されてたから色も白い。でもそのぶん相手チームに舐められてヒットやホームランは打ちやすかったけれど。
「見た目、ちょーお姫様みたいなのに、意外とサバサバしてるんだね」
「いやいや、髪の毛短いのに、お姫様はないよ」
「ううん。遥香ちゃんめっちゃ可愛いよ」
おっとりした喋り方に、流れている時間までもスローになっていくよう。
私なんかより、美乃梨ちゃんのほうがはるかにお姫様っぽいのに。
「癒し系だぁ」
「え?」
「マイナスイオン系女子だぁ」
困惑したように首を傾げる美乃梨ちゃんに「いいのいいの、こっちの話」とニヤニヤを押さえられない顔で応える。
最高の友達ができたかもしれない。
***
入学式を無事に終えて、次の日。朝から新入生への部活動の紹介が行われた。
放送、吹奏楽、茶道。
サッカー、バスケ、バレー、ハンドボール、陸上……そして野球。
それぞれの部員全員が壇上にあがり、部長が挨拶をしていく流れ。
私はその光景を静かに眺めながら色々考えていた。



