「マジか、彼方。俺もちゃんと背ぇ伸びっかなぁ?」

「大丈夫だろ。蒼の父ちゃんも背高いし」

「そっか!」


ふたりの会話をふたりの間で聞きながら歩く。


だけど、そっかぁ。
中学生になると世界がすこし違って見えるんだなぁ。


小学生までは毎日学校で友達と話して、勉強して、休み時間にはしゃいで、放課後と休みの日は野球に一生懸命で。


だけど、中学生になったらやっぱりその……恋とかも、しちゃうのかなぁ。


……ちょっと想像つかないな。


「あっ、私たち同じクラスだよ!」


学校に到着して掲示板に貼られたクラス表を見る。
生徒会の人から胸につける赤い花をもらって、教室までの道を歩いた。


その、途中。


「ねぇ、蒼……」

「ん? どうした、遥香?」

「私たち、なんか、見られてない?」

「遥香もそう思う? 実は、俺も」


廊下を歩きながら蒼とこそこそ話す。
私たち三人はなぜか注目を集めていた。


でも、理由がなんとなく、わかったかもしれない。
女子の目がハートになっている。しかも彼方と蒼のことを見て。


「お前ら双子のこと見てんだよ」

「はっ⁉︎」


私たちの会話を聞いていたのか、彼方が口を挟む。
しかも見当もついていなかった内容に驚く。


「双子は珍しいしな」

「そう、かな?」

「まあ、お前らはとくに、目立つだろうし」

「なんで?」

「美男美女だから?」

「………」


まさかの言葉に私と蒼は驚いて黙る。


「それはない!」

「それはねぇ!」


私と蒼の言葉がぴったり重なる。


「うわ、急に双子っぽいことすんなよ」