──だから泣くな。
続きの言葉は私の脳が勝手に再生した。
だけれどあながち間違いではないと確信すらある。
だけどごめん。さらに泣いてしまって。
しばらく泣いて、ひとしきり泣いたあと。
涙を拭って「うんっ」と笑って大きく相槌をうった。
それは、ふたりの夢。彼方の夢は、私の夢。
そう思うと、なんだかぐちゃぐちゃだった心が落ち着きを取り戻すことができた。
「帰ろう。蒼が心配してる」
「うん」
立ち上がると、私たちは並んで家までの道のりを歩いた。
水色の空に白い雲が頭上に広がっている。セミの鳴き声が何重にもなって、夏という季節を過ごしていることを嫌というほど実感させてくる。
こっそり彼方の横顔を見てもなにを考えているのかさっぱりわからないけれど、それでいいと思うんだ。
……嬉しいんだ。私。
彼方が夢を持ってくれて。私の描いた夢を、自分の目標にしてくれて。
これからどんどん大きく成長していくなかで、夢に近づいていく彼方をそばで見ていたい。
それが私の願いになる。
私、彼方の夢を一番近くで応援するからね。
野球をしている彼方が好き。
彼方がいたから、野球を好きになった。
去年の夏、マウンドの中心で輝く彼方がいたから。
私も、夢中になれるものに出会えたんだ。



