「ごめんね、なんか……」
流れていた涙を無理やり止めて、不器用に笑って見せるけれど、彼方の顔は険しいまま。
私が泣いているから彼方を不安にさせているんだ。
わかっているけれど、これ以上どう言えばいいのかわからない。
「遥香」
「うん?」
「俺、がんばる。野球選手になる」
「うん……。彼方ならなれると思うよ」
突発的な宣言に、私は困惑しながら返事をする。
だけれど、いきなり、どうしたんだろう。
いまが楽しければそれでよかった彼方がいきなり夢を語るだなんて。
驚いた。
「だから絶対甲子園に行く」
「うん」
「お前のぶんも俺が頑張る」
「……うん」
どくどくと心臓が活発に動きだす。
なに、これ……どうしたの、私。
野球をしているときの彼方は本当に楽しそうに笑うのだけど、普段の彼方はクールな方だ。あんまり喋らないし、笑わない。まるで野球以外のことは興味ないかのように。
言葉は短く、抑揚もないけれど……もしかして、彼方なりに私を励まそうとしてくれている……?
「グラフト一位でプロ野球チームに入団して」
「うん」
「その年の新人賞をとる」
「うん」
止まっていた涙がまた溢れてくる。
……それぜんぶ、私が描いた彼方の夢じゃん。
「それでヒーローインタビューでお前の名前を呼ぶから」
「うん」
何度も頷くと、彼方が私の頭のてっぺんに手を置いた。
「お前の夢は、俺が叶えてやる」



