ふたりを見る。すると顔を見合わせたふたりが困惑したように両眉尻を下げた。その不穏な空気を感じとり、私の決意が不安に煽られる。
「もしかして遥香、知らないの?」
「なにを?」
蒼が言い辛そうに続きを渋る。
「女の子は、甲子園にはいけないんだ」
「っ、どうして……⁉︎」
彼方が控えめに告げた。
瞬間的に頭に血が上って、大きな声が出た。
「どうしてかはわからないけど、甲子園に女の子は出られないって決まってるんだ」
言葉にならない憤りに、思わず立ち上がる。両手を力一杯握って、手のひらに爪が食い込む感覚がした。
「そんなのっ、ひどいよ……っ!」
そう叫ぶと、そのまま、感情のままに家を飛び出した。
真夏の炎天下。数メートル走るだけでも汗が吹き出すし、顔は涙でぐしゃぐしゃだし、もうなにもかもが気持ち悪い。
だけど、それ以上に……悔しかった。
女の子というだけで、スタートラインにすら立たせてもらえないなんて、そんなのあんまりだ。
どうして、どうして……。
家の近くの公園に行き着き、屋根のあるベンチに腰かけた。
爆発した感情がおさまらない。悶々と胸の中で渦を巻いている。
この公園は近所の子どもたちが集って遊ぶ、ここら地域に住む私たちの居場所。
ここで何度も蒼や彼方とキャッチボールをした。
野球って……男の子のスポーツなのかな。
私だって野球がこんなに大好きなのに。
「遥香」
「……彼方」
頭上から影が落ちてくる。
近づいてきた足音に顔をあげると、そこに立っていたのは彼方だった。
走って追いかけてきてくれたのか、彼の額にも汗が滲んでいる。



