天国で君が笑っている。



物音で不意にこちらに振り返った彼方が私を見るや否や瞬間的に照れたように顔を背ける。
私は不思議に思いながら彼方の隣に腰を下ろした。


「早かったね」

「ああ、うん。走ったから」

「そっか」


ひとつふたつ、会話をすると試合開始の合図であるサイレンの音が流れ出した。どうやら髪の毛を乾かす時間は無さそうだ。
首にバスタオルをかけたまま、私はお母さんが用意してくれた手作りのクッキーに手を伸ばした。夏だし、きっとすぐに乾く。


アナウンサーの実況と元プロ野球選手の解説を聞きながら私たち三人は真剣な眼差しでテレビを見つめる。


甲子園。
グラウンドの土を踏むだけでも難しい。
野球を嗜む者にとって夢の舞台。
全国の野球が大好きな人たちはみんなここを志す。


白熱する試合展開は手に汗握った。ヒットを打ってもホームベースまでは一歩届かない。お互いに点を取れないまま九回の裏が終わり、延長戦へと持ち込まれた。


アナウンサーが「間もなく放送終了のお時間ですが、引き続きこのままお送り致します」と告げてホッとする。夜の熱闘甲子園まで待てるわけない。


「どっちが勝つかな⁉︎」


興奮気味に蒼に聞くと、「わかんない」と蒼は私の方を一切見ずにテレビにだけ注視していた。彼方も固唾を飲んで画面を見守っている。


これはいわゆる投手戦だ。両チームのエースが意地とプライドで絶対に打たせないという気迫が、甲子園球場から遥か遠くの県にある小さな家のリビングにいる私たちにまで伝わってくる。けして打者たちにチカラがないわけではないのだ。


特にピッチャーである彼方にとっては痺れる展開だろう。


……と、その時だった。