天国で君が笑っている。



歩く道で、私たちの笑い声だけが響いていた。


***


小学生最後の夏休みに入っていた。ヒリヒリと肌を焦がす夏の太陽は容赦を知らない。
日焼け止めなんて必要ないと思っていたのだけれど、母がどうしてもって言うから毎日塗ってから野球の練習に向かう。別に焼けたって構わないのに。


一年を通して一番大きな大会は、一週間後に行われる夏休み最後の日曜日だ。この日を目標にみんな練習を重ねていると言っても過言ではない。


「遥香、早く帰るぞ!」
「甲子園の決勝始まっちまう」



練習が終わってすぐ。
彼方と蒼に呼ばれ、慌てて身支度を済ませる。ふたりに追いつき、ダッシュで家まで走った。


今日の練習は午前中のみ。一度彼方は自宅に帰り、その後で私たちの家にきて、一緒に甲子園決勝を見ようということになっていた。


「俺が先!」
「昨日も蒼が先だったじゃん!今日は私!」


帰宅後、蒼とふたり、どっちが先にシャワーを浴びるかで喧嘩した。毎日行われる同じ内容の喧嘩にお母さんがキッチンで呆れている。
結局ジャンケンすることになって、私は負けた。今日の打率じゃ蒼に勝てたのに。くそう。


頬を膨らませてソファに座り、お母さんが出してくれたキンキンに冷えている百パーセント果汁のオレンジジュースを喉に流し込む。


早くしないと、彼方が来ちゃうのに。甲子園の決勝だって始まっちゃう。
まだかまだかとそわそわしていると、蒼が呑気に「次いいよ」と声をかけられた。
私は「もう遅いよ」と皮肉を言い、お風呂場に急いだ。


ちゃっちゃと頭と身体を洗い、お風呂からあがる。バスタオルで全身を拭き、リビングに向かった。テレビのスピーカーから甲子園の生中継されている音声が聞こえてくる。
走って行くと、そこにはもう彼方の姿があった。