バッターボックスに入って、構える。
するとキャッチャーが「外野前進!」と定位置にいた外野手三人を前に呼び寄せた。それを見て、カチンとくる。鼻息が荒くなる。
……私がか弱い女の子だからって、そんな守備位置にしたこと後悔させてやる。
「…………」
ピッチャーが構える。そして大きく腕を振りかぶって投げた。
「ストライーク!」
キャッチャーミットにおさまったボールは外角やや低目。コースを狙ってきたのか、たまたまなのかはわからない。
ただ、打てないことも無さそうだ。
ふとベンチを見る。監督が静かに私を見つめている。どうやらサインはない。そしてネクストバッターボックスには彼方がいて、ストレッチをしていた。
次、彼方が代打で出るのか。じゃあ、なんとしても塁に出て彼方に繋がなきゃ。彼方にまわせば、なんとかしてくれるはずだから。
「……っ……」
ピッチャーが投げる。向かってくるボールにバッドを真っ直ぐに振る。芯をとらえた感覚がして、綺麗な金属音がする。最後まで振りきると、ボールがセンターの頭を悠々に超えていったのが目に入る。
え……あ……う、打った?
「遥香、走れぇ!」
蒼の声が聞こえて、私は我に帰る。そうだ、走らなきゃ。
バッドを置いてファーストベースへ向かう。そしてランナーコーチャーの指示でファーストベースを蹴ってセカンドへと走った。
スライディングをして、私の打った打球はツーベースヒットとなる。
「遥香ナイスー!」
「いいぞ、遥香!」
チームメイトたちの盛り上がっている声が届いて、嬉しくなる。監督も「よくやった」と拍手して、深く頷いてくれる。
そして、とうとう彼方が打席に入る。彼の凄さは相手チームも知っているはずだ。



