天国で君が笑っている。

まばたきを繰り返して、彼の目を見る。


「もし君が明日死んだら、今日の自分で満足できる?」


***


あと後うまく返事ができない私に花崎瑠衣は軽く微笑んで「意地悪言ってごめん」と、大きな手を私の頭にポンと置いて帰って行った。

野球部の練習が終わりかけていることを確認して、私は教室を出た。

そして校門の前に立ってふたりのことを待った。


「お待たせ」
「あれ、蒼は?」
「あーー……あれ」


気まずそうに彼方が指を刺す方を見る。
下駄箱のわきで、弟が女の子と親しげに話している姿を発見する。


「あれか。蒼の彼女」
「そう。だから今日はふたりな」
「そっか」


蒼に彼女ができたっていうことは、そうなる、のか。
そうか。
え、まじか。


「帰るぞ」
「う、うん」


先に歩き出した彼方に追いつくように小走りをした。
トクントクンと可愛らしく動く心臓。
胸の辺りに手を置いて、それ以上心臓が暴れないように抑えつけた。


「遥香」
「ん? なに?」
「最近花崎ってやつに絡まれてない?」
「えっ」
「たまに遥香がいる教室見るんだけどさ。最近そいつとばっかいるから……」


バレてたんだ。
グラウンドから教室見えるんだ。
窓際に座ってるからそりゃ見えるか。


「うん。からかわれてるだけだよ」
「好きなの?」
「え?」
「あいつのこと、好きなの?」


すっかり身長差が開いてしまった彼方の切れ長の目が、私を見下ろしている。
表情が読めない。どんなことを考えて聞かれているのかわからない。
こんなに毎日ずっと一緒にいるのに。


「そんなんじゃ……」
「蒼も彼女できたし、いいよ、別に」
「なにが?」
「無理して部活終わるの待ってなくても」