天国で君が笑っている。



「おはよ」


朝、学校へ登校するとすぐに花崎くんから声をかけられて、身体が硬直した。
目を合わせずに「……おはよ」とだけ返して自分の席へ急いだ。


昨日の今日でどんな顔をして花崎くんの話せばいいのかわからない。


「避けないでよ」


私の席まで追いかけてきた花崎くん。


「だって……」

「昨日はたくさん僕のことで悩んでくれた?」


しゃがみこんで私に目線を合わせてくるそのあざとい仕草。


「そりゃ……」


生まれて初めての告白だったから。
変な緊張で、言葉がすんなり出てきてくれない。
目の前にいるのは、ただの、同級生なのに。


「よかった。じゃあ昨日眠る前は僕のことでいっぱいになってくれたんだね」


カァァッと顔が熱くなる。
まるでそれが狙いだったかのような言い草が、癇に障る。
軽く睨むと、彼は少し笑って離れていった。
これが毎日続くのかと思うと憂鬱になる。


深いため息を吐いて、窓の外に目をやった。


だけど私は彼を傷つける覚悟ができない。
人より長生きできない彼の人生を考えると、強く拒否できない。
私と同じだから。


***


「ねぇ、遥香。俺、告白された」


蒼がそう興奮気味に話しかけてきたのは、数日後の夜だった。
お風呂に入って髪の毛をタオルで拭きながらスマホで動画を見ていた。


振り返って「誰に?」と聞くと「同じクラスの子。たぶん遥香は話したことないと思う」とだけ言われ、「ふーん」と再びスマホに目線をやる。


だけどふと、蒼のことが好きな美乃梨ちゃんのことが頭をよぎって"まさかね……"と思いながら「返事は?」と聞いた。


黙りこくる蒼に「まさかあんたオッケーしたの⁉︎」と詰め寄る。


「まあ……」

「なんで⁉︎ 美乃梨ちゃんは⁉︎」

「だって……断れなかったし……」


不甲斐ない我が弟に怒りを通り越して呆れてしまう。