感情に浸ると、簡単に泣きそうになる。
泣かないと決めていても、涙腺は勝手にゆるむ。
あと何回、こうして彼方とキャッチボールできるのかな。
あと何回、彼方と一緒に帰れるのかな。
彼方の笑顔を見れなくなる日はいつになるのだろう。
「帰るか、腹減った」
「うん」
夜道を歩く。
徹底して車道側を歩く彼方の行動に意味を探すのをやめたい。
同じクラスにならなかったけど、時々うちのクラス来ては話しかけてくれたり。
こうしてふたりきりで帰ることを嫌がらなかったり。
期待するのをやめたい。
万が一、そうだったとしても、私に残された時間はさほどないのだから。
だって、どう考えてもふたりとも不幸にしかならない。
ずっと一緒にはいられないのだから。
ただ、放課後に彼方の背中を見つめているだけで私は……いいの。
今、すごく幸せなの。
なんて、言い聞かせてるみたいでいやだ。
それが真実になればいいのに。



