「ここに来たら笑満ちゃんいたから声かけたら……すごい勢いで逃げられた……俺嫌われてたかな……いや……あんな事件あった奴なんて嫌だよな……」
 

ぽつぽつ話すが、今まで見たことないくらい落ち込んでいる。


遙音は基本的にテンションが高い。
 

咲桜から、松生が遙音のことを憶えていたことは聞いている。


今もすきなことも。


だが、遙音から松生の話を聞いたことはなかった。


「……松生と知り合いなのか?」
 

知らぬふりで訊いてみる。


遙音の過去を思えば、下手に地雷は踏みたくない。
 

遙音は更に俯いた。


「……最後まで俺に優しかった、唯一の子だから……。頼むから今は凹まして………」
 

――憶えていたよりも、深いところで知っていたようだ。
 

最後まで、か……。