「じんぐー……」


「……なにやってんだお前」
 

咲桜を教室に送り出し資料室に戻ると、遙音が悲壮な顔で壁際に体育座りしていた。


「お前は仲良さそうでいいな……」


「だからなんだよ」
 

遙音だったら咲桜とのことはばれても構わないのだけど、なんでそんな恨めしそうな顔で見られなくちゃならない。……まさか――


「さっき、笑満ちゃんに逃げられた……」


「………」
 

遙音まで咲桜に、という心配はなさそうだ。


と言うか、笑満ちゃん? 昨日もそう呼んでいたように思うけど……。


「松生?」
 

椅子につくと、遙音は小さくなったままこくりと首を上下させた。