なにをされたか一瞬ではわからなかったけど、流夜くんが離れたあとに額に手をやって、三秒ほど固まったあとに現実感がわいてきた。


あ、あの……。


「駄目か?」


「………」
 

困る。


怒りたいのに怒れない……流夜くんが望んだ位置を知れば、さっきみたいに突き飛ばすことはもう出来ないし、そもそも私は倫理的に駄目だとは思っていても―――


「それとも嫌か?」


流夜くんの口調が、からかい調子になる。
 

小さく口を開いた。


「………いや、ではない、よ……」


「よかった」
 

流夜くんは嬉しそうに答えると、同じようにもう一度口づけ、最後には抱きしめてきた。
 

こ、こんなこと、全部、恋人とかがすることじゃないか、とは思うのだけど……流夜くんと一緒にいる時間がすきになった次は、流夜くんの腕の中がすきになってしまったようだ。