「だ、だって流夜くんが私にそんなことするとか謎だったから私の記憶違いって言うか夢の中のことだったとか理解することにしてて――」


「ちょっと待て。咲桜、憶えてるのか……?」
 

咲桜は、家族の話をしたことは思い出していた。


キスしたのはその直後のことで、まさか本当に嫌なことだからそこだけ忘れていたかと思っていた。


そのあとに咲桜は眠ってしまっていたし。


「……今、思い出した、と言うか……だから本当に現実かどうかわからなくて……本当なの? あ、そう言えばさっきこうしたとか言ってた……」
 

だんだん咲桜の顔が紅いんだか蒼いんだかわからなくなってきた。


「したよ。そしたらお前が腕に抱き付いてきて、それで解けなかった。……ほらな、原因は俺だったろ」
 

次の朝にそう言うと、咲桜はぽかんとしていた。


だから本当に忘れられていたと思っていた。