咲桜の右頬の手をかけ、屈みこむ。


軽く触れ合うと、それまで微動だにしなかった咲桜から衝撃を受けた。


思いっきり、突き飛ばされた。


「な……なにすんのばか!」
 

顔を真っ赤にさせた咲桜が、泣きそうな顔で睨んでくる。


「そう、いうのは……恋人がするものでしょう! 不埒者―っ!」
 

言い放ち、資料室を飛び出した。


「………」
 

拒絶された。


「―――」
 

違う。
 

拒絶されるようなことをしたのは自分だという事実があるだけだ。


昨日も追いかけた背中を、今度は抱きしめる形で捕まえた。