「なに? 落ち込んで。咲桜ちゃん怒らせでもした?」
 

ファイルの端を肩に載せて、斜めに見てくる吹雪。相変わらず鋭いな。


「怒らせた……。眉間に拳喰らった」


「どんだけ怒らせたの⁉ あの子がそんなことするって! あー、それで落ち込んでるわけ? 仲直り出来てないって」
 

吹雪にしては珍しく、目を剥いて驚いていた。


「あ? いや、殴られて離れたら怒りは収まったようだ」


「殴られて離れた……? なに、流夜」
 

じとっとした瞳で見られた。あるいは軽蔑の視線。


「咲桜ちゃんに手ぇ出したわけ? 在義さんに殺されるよ」


「………」
 

即座に反論出来なかった。


手を出した――のは本当だ。


抱きついて抱きしめて抱き寄せたから。


でも危険なことはない。……はずだ。