幼少時は、知らない人たちに疎まれながら、安穏と眠ることなど出来なかった。


体面上引き取っただけの人たち。


一人だけ生き残った赤子。


犯人が捕まっていないことで、相手側も不安や恐怖心があっただろう。
 

今を割かし楽しく生きているから、当時の彼らに文句はないし責める気持ちもない。


こんな面倒しか抱えていない子どもを、一時でも匿ってくれたことに感謝している。
 

けれど、どう扱っていいのか困っている口調、冷たい瞳、あたたかさのない空間。


ずっと冷えた心で、穏やかな眠りは訪れてはくれなかった。
 

だから、咲桜がいた夜に自分でも信じられないほど熟睡していたことは、安心感を与えてくれた。


訪れる闇に一人でないと思えたのは初めてだった。
 

ずっと、あの日がまた来たらいいと思っていた。


在義さんという親バカの壁はいたく大きいが、咲桜が傍にいてくれるためだったらなんだって出来そうだ。