「………」
 

笑満ちゃんが俺の護りを出て行こうとするのを、その手首を摑んで止めた。


すると笑満ちゃんは驚いたように振り返る。


「あ――ぶない、んじゃないか?」
 

小声で言うと、笑満ちゃんはふわっと笑った。


「大丈夫。あんなんでもあたしの友達だから。……少しだけ、行ってくるね」
 

その言葉は、まるで帰る場所は俺のところだと言うようで。


……俺は、少し悔しい気持ちを抱えながらも手を離すことが出来た。


「バカだねえ、あんたは」
 

日義の前に立って、笑満ちゃんは毒づいた。


「ごめん……」


「あたしはいいよ、何も被害ないし。ただ、咲桜にはちゃんと謝っておきなよ。あんたが先生のこと追っかけまわそうとしてるの知って、必死に阻止しようとしてたんだから」


「うん……」


「……咲桜、今やっと自分のこと肯定出来てるの。自分の命とか……先生のおかげで。……あたしにもあんたにも適わなかったこと」