今更教師として取り繕うところもないので、気取らずに声をかける。


「少し……話し足りないことがあって来ました」
 

そう言う声は間延びしていて、やはりいつも寝こけている日義だった。
 

部屋に入れると、俺からまず気になったことを問うた。


「どうやってここを?」
 

まさか咲桜の危惧通り、尾行(つけ)られていたのだろうか。


そんな気配を最近感じたことはなかったけど……。


「なんかのときに……職員名簿の住所見たような気がして……。薄ら憶えてました」


「………」
 

故意に見たわけではないことを薄ら憶えていたのか。


学校でも大概寝ているくせに首席とか、遙音とは違って秀才ではなく天才タイプのようだ。
 

キョロキョロしている日義にも、一応茶を出す甲斐性は出来るようになった。


その辺りは礼儀だと咲桜に諭されたから。