咲桜を抱きしめて、これほどまでに誰かに護られていると思ったことはない。


日義の問い詰めに対する咲桜の過激な発言には正直面喰ったが――自分がそうはさせない。


絶対に大丈夫にする。
 

卒業式まで待つというあの発言は、本当に全部咲桜のためだ。


そこが少し悔しいけど――長い友人は、咲桜を傷つけることは厭うのだろう。
 

アパートの駐車場に車を停めると、部屋の前に人影があった。


どう見ても俺を待っている姿は日義だった。


昼間の件、まさか気が変わったとかいって押しかけて来たのではないか。


日義の普段生活の態度からしてありうる。
 

車を降りた、その扉が閉まる音で気づいたのか、日義はゆっくり顔を向けた。


覇気のない表情。


これこそ俺の知る『通常運転の日義頼』だった。


「どうした」