「そうだな……見ていて飽きないな」


「へー?」


「飽きないついでに構いたくなる」


「……ほー」


「あと、言動がいちいち愛らしい。触ったままでいたくなる」
 

なんか咲桜に触れていると安心するというか……和んでしまう。


神経を尖らせる仕事が本業だから、気を張っていることが多いんだけど……咲桜の顔を見ただけで、それが緩む。
 

咲桜がここにいてくれる間くらいは傍にいたいんだけど、私事は山積みだ。


弟が手分けしてくれているけど、咲桜を構ってばかりいられないのも実情。


でも、帰れ、なんて言いたくない。


時間と在義さんが許す限り、一緒にいたい。
 

俺が私事を始めると、咲桜は少し離れる。


人目に触れていいものではないことを、刑事の娘としても承知しているんだろう。


だから、ひと段落つくごとに充電させてもらう。
 

手を差し出すと、素直にその手を重ねてくれる。


そのまま、なんとなくローソファに並ぶ。


その時間が、今の俺の一番大事なものだ。


「……りゅう、それって……」


「あ?」
 

聞こえた降渡の声が震えていた。


なんだ?