思わず、ここが学校であることも忘れて叫んだ。
 

冗談じゃない!
 

咲桜が振り向いた。すぐに距離を詰めた俺は、咲桜の腕を摑んで引き寄せた。


「りゅ――先生っ?」
 

名前を呼ぼうとして、現実に気づいたようだ。


その呼ばれ方に俺もはっとする。


「日義――くん、何してるんですか」
 

変な言い方になってしまったが、とにかく咲桜を日義から離さないと。


「いやいや先生――やっと顔を見せてくれましたね」
 

浮かれたような声に、俺が正面から見た日義は瞳をきらめかせていた。
 

……日義?
 

なんでそんな嬉しそうな顔をする。


こんな生気あふれる日義の顔を見たのは初めてだった。


「俺は別に咲桜をどうこうしようなんてないですよ。ただ、学外での先生に逢いたかっただけで」
 

キスなんてしてません。と、腕を広げてみせた。
 

……やっぱりばれていたか。