「………」
 

咲桜がいないと部屋すら広く感じる。
 

咲桜が来なくなったのは昨日から。


――と言っても、昨日は龍さんのところで逢えたわけだから、それから数えたってまだ一日だ。


……まだ、一日だ。


「……俺はアホなんだろうか」
 

思わず呟いてしまった。


学生時代、女子の面倒さ加減には嫌気がさした。


だから、『彼女』がいる理由がなくなった大学卒業頃からは恋人付き合いしていた人もいない。


恋人がいなくてもすきな人がいなくても問題を感じたことはなかった。


むしろ、自分の生きている道を見ればそういう存在は枷(かせ)にしかならないように思っていた。


それが九つ年下の子に翻弄されるようになろうとは。