「……咲桜にべた惚れしてる人だよ。咲桜のこと一番大事にしてくれる」 「ふーん」 自分から訊いておいて、気のない返事だった。 「じゃ、今度逢わせてよね」 ひらりと風に載せるみたいに簡単に言葉を残して、頼は自分の席へ行ってしまった。 私が是非の答えも出す前に。 「咲桜、大丈夫?」 笑満が身を屈めて様子をうかがってくる。 片手でこめかみを押さえながら肯いた。 本当は大丈夫じゃない。でも、欠片くらいは大丈夫だった。 昨日、龍生さんのお店で流夜くんと逢えたから。