残った笑満に、私は顔の前で両手を合わせた。


「笑満ありがとう」
 

小声で礼を言うと、笑満は軽く手を振った。


「いや、簡単に納得してくれてよかったよ。……頼。あんた咲桜を困らせたいの?」


「……笑満、知ってたのか?」
 

ぼんやりした声で問われると、こちらの覇気が抜かれてしまいそうになる。


「……知ってるけど」


「どんな人?」


「……あんた、見たんじゃないの?」
 

笑満は私から、疑わしい経緯は総て聞いている。


「ちらっとだけ。性格までわかんないじゃん」


飄々と返されて、笑満は一瞬私を見た。


流夜くんだと気付れているの? 私は瞼をおろすことで答えた。