「………」


「………」
 

沈黙に包まれる。


「……咲桜。なにか危ないことがあるのか?」
 

俺から話しかけると、咲桜は少しだけ顔を浮かせた。


何か言いたそうに唇が揺れたが、音にはならない。


そして、軽く首を横に振った。


テーブル席に対面で座っているから、机の影になって見えないけど、膝の上で拳を握っているように見えた。
 

向かい合わせ。


手を伸ばせば咲桜の頬には触れられる。


……咲桜の方へ向かって手を差し出す。


けれど、咲桜には触れることなく机の上に落ちた。


「咲桜。……なんでもいいから話してくれないか? お前に無視されるのはきつい」


「む、無視なんてしてないっ」


「じゃあ、なんでこっちを見てくれないんだ? 俺がなにか嫌なことをしてしまったか? あるなら言ってくれ。……怒らないから」
 

咲桜の心が知りたい。


その中で自分は、咲桜に対して失態を犯したのだろうか。


だから咲桜はこんな不安そうな顔をするのか? 


非が自分にあるならば謝って解決したい。


咲桜の心が不安になっているのは、嫌だ。


「……昨日、頼に見られたみたいなの」