『いや! いやいやいやっ、無理なんてしてない。私が自分から言い出したことだし。――だから、早くまた、行けるようにするから』


「……その辺り、聞けるのか?」


『……うん。話す。……じゃあ、ね』


「ああ……」
 

躊躇うような息遣いが聞こえて、やっぱり通話終了には出来ない――でいたところへ。


「あのさ、それ僕の電話なんだけど。他人のツールで青春しないでくれる?」
 

安定の、吹雪の乱入。


相手側にも聞こえたのか、咲桜から慌てた声がした。


吹雪が俺の手からさっとかすめとる。


「じゃあね、咲桜ちゃん。道中気を付けて。もし本気で危ないことになりそうだったら、不良探偵の貸し出しも出来るから。うん……わかった。気にしないで」
 

じゃあね、と、吹雪はなんの感慨もなく電話を切った。