声の調子から嘘発見でも出来たらいいのだけど、こと龍さんと在義さんには未だに通用しない。


やはり師匠は上手か。


今も、動揺も見えなく、本当にいないのかもしれないという疑念が出来てしまう。


「また、咲桜を連れて行くよ」


『おう』
 

それだけ伝えて、電話を切った。
 

もしかして在義さんは龍さんのところにいるかと思ったが、どうかはわからなかった。
 

咲桜のいる華取の家を振り返って、思わず口元が綻ぶ。


最終的な目的は果たせなかったけど、それでも、咲桜の恐怖や不安が少しでも薄れたらいい。
 

……受け取ってもらえてよかった。すぐにつけていられるほど、首にある傷は薄らいでいると信じたい。
 

あの子からたくさん幸せをもらうように、幸せをあげたいと思っている。