咲桜と離れがたいのを頑張って離れて、華取家に置いて、ちゃんと鍵を閉めるところまで確認した。


在義さんが戻ってくるまでいようかとも思ったけれど、自分なにを仕出かすかわからない。


それに、今日在義さんは俺を避けて家に帰っていないんだ。


泥沼にもしたくない。


せっかくちゃんと、咲桜と恋人になれたのに。


『朝間』と書かれた家の、インターホンを押す。


出来れば一番顔を合わせたくない人だが、現状咲桜の安全には一番効力のある人だ。
 

すぐに戸口が開いた。出てきたのは小柄な老女だった。


「どちら様でしょう?」
 

女性は小首を傾げて優美に問いかけてきた。


しっかり伸びた背筋。着物を着ていて、しゃんとした様子が伝わってくる。
 

………。


「ご存知かと思います。華取咲桜さんの、見合い相手です」